親心 子心

昨夜、30年前くらいからのお付き合いのあるお客様からお電話をいただきました。

大手のМ&A事務所と幾度となく「面談を交わしたけれど、やはり青田君に任せるわ」。

理由をお聞きしたところ、やはり20数年間もお付き合いを続けていて、一番細部まで理解しているのは
「どう考えても君だし、君のニュートラルな考え方にはいつも驚かされる。
アバウトなところが無いとは言えないけれど、よくもまあ、こんなに顧客目線で物事が考えられるなあと感心する。
私なら、同じ経営者だし、どこかで自分の利益を優先してしまうが、君にはそういったところがない」
と仰って頂きました。

確かに自分で言うのもなんですが、私は利益を優先にしません。
いくら稼いだかではなく、いかなる事を成したかを最も優先します。

そもそも不動産の仕事をしていながら、事業承継の仕事をし始めたのも顧客の高齢化がきっかけです。

不動産のオーナー様は、私のクライアントの場合、だいたいが社長か事業の経営者です。
上場企業の社長さんや役員さんもいらっしゃれば、中小零細企業の社長さん、病院の理事長さんや開業医の先生、個人事業主の方などです。
本業をお持ちで、かつ、別会社や個人で不動産の大家さんも兼ねていらっしゃいます。

昨夜お電話をいただいた方も、元もとは製造業の社長さんでした。
2年前に本業の製造業はМ&Aで会社を売却しました。
子どもさんは3人いらっしゃいますが、会社の後継ぎはいらっしゃいませんでした。
子どもさんはみなさん、すでに家族を持たれて関東にいらっしゃいました。
公務員であったり、上場企業にお勤めであったりして、製造業にはまったくご関心がありませんでした。

しかし、今回は違います。
不動産、いわゆる保有資産として相続すると所得を生み出す収益不動産なのです。
けれども、持っていたからと言って勝手にお金を生み出してくれるような時代は過去のこと、いまは大家業も経営の時代です。

上手に経営し、運用することでお金は生みますが、下手をすれば持っているだけでリスクとなる「負動産」になりかねません。

社長は電話で仰いました「どう考えても、うちの子らが争わず、ちゃんとやっていけるとは思えなかった。
でも、子どもたちに話をしたら、『青田さんが間に入るなら話を聞く』とみんな言っていた。いったい何をしたんや?」。

私は社長さんにこうお伝えしました。
「私と社長が出会ったきっかけから、一件一件不動産を増やしていかれるまでの昔ばなしを致しました」。
私はその社長がどのようにしてお金を工面し、いかにして不動産を買い増して行き、本業を安定させ、子どもさんを影ながら見守り、そしてここ数年は終活に向けて悩んでこられた、そのすべての場面を見てきました。
その社長さんとお会いするのは、たった月に1度か2度のことですが、20数年間、ずっと寄り添ってきました。

親御様は、いつまで経っても子どもは子どもです。
どんなに偉くなられても、どんなに歳を取られても、子どもとして接しなさるのだと思います。
どうしても客観視は難しくなるようです。

反対にお子様方も、親御様とはなかなか素直に向き合うのが難しいようです。
自分がどれだけ自立し、成長され立派になられたとしても、「親は子どもだといういろめがねで見る」ことを、よく存じておいでです。

でも、両者は、本当は仲よくしたい、なかよしでありたいのです。

でも、お互いがなかなかそれを認められないことが多いのです。

親心があり、子心がある。
私はいつも、このようなお客様に申し上げます。
なかなか、その接点を交わらせることは難しいです。
でも、第三者から言われると素直に聞いていただけることもあるのです。

わたしはそんな親と子を交わらせる「緩衝材」のようなお仕事をさせていただいています。