日本人観光客が戻ってきた

世界経済が一層、混乱している背景の要因のひとつにアメリカ・トランプ大統領への強い失望感があります。
 ニューヨーク株式相場は連日、かなりの幅で乱高下を繰り返し、昨日17日には3月で3度目のサーキットブレーカーを発動しました。

 先ほどFRB(連邦準備制度理事会)がCP(企業が短期資金の調達に使うコマーシャルペーパー)を買い入れると発表しました。これはおおよそ10年ぶりに取られる処置ではあるものの、この程度では補いきれません。

  今月11日に、米国にとって兄弟や親戚ともいえる欧州26か国からの入国禁止をいとも簡単に言い放ったトランプさん。

 「ここまでするか」と思われた方も少なくはないはずです。衝撃は欧州諸国のみならず、世界中を驚かせました。コロナ・ショックならぬ「トランプ・ショック」という空気感がコロナウィルス同様に世界に蔓延してしまいました。

 米商務省によると昨年、米国への海外渡航者は西欧だけで約1500万人。これは米国の海外渡航者数の4割を占めています。

 中国からの入国を禁止し、更にこれでは、このあとの混迷は火を見るより明らか、ということを多くの投資家は察知しました。

 影響を多分に受ける国際航空運送協会は、この状況を「異常な圧力に直面している」と表現し各国政府に支援を求めました。実際、米国の入国禁止措置で約7000便の欧米間の渡航便はストップする見通しです。

 人の流れが止まることで直撃するのが観光産業です。それは米国だけのことではなく、各国で、そして日本でも影響が出ています。

 2月末、コロナの影響で観光客激減のニュースが多く流れました。嵐山などの観光地を撮影し、「京都は閑散としている、宿泊費も値引きしている」と言うネガティブキャンペーンのような内容でした。

 しかし、そのニュースを見て国内の観光客が多少ではありますが京都へ戻ってこられました。

 実際、その後は政府の「瀬戸際」対策で、さらに少なくはなったものの、それでも東日本大震災直後よりも観光客は多く見受けられました。


 ただし、この約10年の間でインバウンドという恩恵により大きく膨れ上がった観光産業の供給と、コロナウィルスで激減した需要のアンバランスが、どこまで、いつまでこの危機に耐えられるかは別の話です。
 
 コロナの問題はいつしか感染拡大も収まることでしょう。一刻も早く、そう願うばかりです。観光産業は航空等の運輸に始まり、宿泊・飲食、土産物の物販など広大な裾野を持つ一方で、多くは中小零細・はたまた個人経営です。
 

 いまは本当に出口が見えない「しんどい」時期ではありますが、何とかこの危機を乗り越えられるように地域が、日本が、そして世界が結束をしてもらいたいと思っています。


最後に京都のある有名観光地の世話役様のお言葉をお借りします。
 「中国人が去った後に、日本人観光客が戻ってきたことの意味をいま、京都の観光業者は知るべきだ」。
 

  観光客は減ったのではありません。
  一時的に膨大に増えたのが元に戻ったに過ぎない、増える前の正常に戻ったとみる向きもあります。今を危機とだけ捉えず、失った国内観光客の信頼を取り返すチャンスだと考え、戻ってきた少ないお客様をもてなしたい、と考えてほしいと私は思います。もう「観光公害」などという言葉を使わなくてもいいように。